「………ん…っ…は……」
寒い。寒い。…冬だから、とか、そんなんじゃなくて、心の奥が。淋しくて、震えていて、たったひとりの、その手のぬくもりを求めている。
「……ぁ、……」
あいつがここを出ていって、あっという間に半年が過ぎて、最初の頃は頻繁にやり取りしていたメールも段々と本数が減って、こっちも研究とかバイトで忙しくなって、……それなのに、あいつのことを忘れた日はなくて。会えないのが苦しい。もどかしい。声を聞きたい。また去年までのように、くだらないこと言って、笑いあって、……。
「っ…」
寒い。だからあたためる。あいつがすぐ近くにいるんじゃないかって虚しい妄想をしながら、…現実のあいつは絶対にしないだろうことを、想像して、手を。声を。
「ぅ…ん……ふ…っ」
綺麗だった思い出を、邪な妄想で汚す。申し訳なくて、背徳的で、苦しくて。自分の浅ましさに泣きそうになる。それでも、快楽を追わずにはいわれない。



笑って。
俺の名前を呼んで。
囁いて。
好きだって。
抱きしめて。頭を撫でて。子供扱いでいいから。

『…テッド』

「ぁ――あ…っ!」












………冷静になると、いつも後悔する。友達でこんな妄想をするなんて最低だ。絶対に知られたくない。こんな醜いところ、知ってほしくない。
その一方で、心のどこかが、こんな浅ましい部分まで全部知って受け入れてほしいって思っている。妄想じゃなくて、本当に、抱きしめて、好きだって言ってほしいって………。
「……は…はは。………っ…」
…そんなこと、あるわけがないのに。
自嘲の笑いを浮かべて、背徳の時間の残滓を拭った。





[背徳のn分]



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