今日は誰が襲撃されるのか。
僕はそればかり考えていた。
「ヨアヒム…」
「…ん?」
「今日も、行くの?」
「そのつもり」
「…確かに、僕はもう半分以上処刑が決まっているようなものだから狼に襲撃するメリットはないのかもしれないけれど…」
ベッドに腰掛けたオットーは俯いた顔を上げる。
不安げな視線が、僕を捉えていた。
「僕は、ヨアヒムが心配だ」
「…大丈夫だよ。狼に見つかるようなヘマはしないから」
「でも…っ」
腕が掴まれる。強い力で。
「はっきり言うよ。今一番襲撃の可能性が高いのはヨアヒムだ。他の人間確定の人たちは何も特殊な能力を持っていたりはしない」
「………」
「狼にとって一番邪魔なのは狩人のヨアヒム。それは間違いないんだ」
「オットー…」
「…僕は、ヨアヒムを失うなんて耐えられない。僕の知らないところでヨアヒムにいなくなってほしくない。だから…ここにいてよ。ヨア」
濃青の瞳が縋るように僕を見上げる。
「不安なんだ…ヨアヒム、お願いだから…」
「オ…ト…」
「昨日は…心配で一睡もできなかった。朝ヨアヒムが戻ってくるまで不安でしょうがなかった。怖かった。…怖かったんだ…」
「………」
僕は少し迷って、ライフルを机の上に置いた。
微妙に手が届かなくて、少し放る形になってしまったのは…仕方ないと思うことにする。
「わかった…一緒にいるよ」
「本当?…よかった…!」
「わっ!」
オットーが抱きついてきて、その勢いで危うく倒れるところだった。
「オットー、…ちょ…っ…ねえ、離し…」
「…嫌だ。嫌だよ、ヨア」
「…オットー?」
「…知ってるだろ?僕はヨアヒムが大好きだ…愛してる。離したく…ないんだ」
「………」
顔に熱が集まるのがわかる。
「ヨア、…そろそろ返事聞いてもいいかな」
「…え、……あ」
「ヨアヒムのお陰でここまで長生きできたんだから、返事くらい聞いてから逝きたいって欲が出たよ。…いい?」
そういえば。
返事をすっかり忘れていた。
オットーの腕をそっと解いて、オットーの隣に座る。
「…………す、好きか嫌いかで言えば、好き」
「…それだけ?」
「……愛してるか、は、まだわからない…。だって、オットーとはまだ、友達って感じだ…」
し、と紡ごうとした唇が塞がれる。
オットーのそれで。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
男とキスしている、のに…。
「友達じゃ、ないよ。もう」
オットーの両手が僕の肩を掴んで、そっと後ろに倒す。
「…キス、したから?」
「そう」
「………で、この体勢は…」
「キス以上のこと、ヨアとしたい」
「……っ、え、待って。僕もオットーも男だからキスはできてもそれ以上って…!?」
「…できるよ。そっか、うぶなヨアヒムは知らないんだね」
キス。おでこと頬に。そして再び唇に。
「大好きだよ、ヨアヒム」
オットーの手が、僕の服のボタンにかかる。
微かな音を立てながら1つずつ外されて、あっという間に上半身がオットーの前に晒された。
「…肌、白いね」
「……貧弱なの気にしてるんだから、あんまり見ないでほしい…」
「そう?僕はこれくらいがヨアヒムに丁度いいと思うけど」
綺麗だし、と付け加えてオットーが僕の腹に手を滑らせる。
「…っ」
くすぐったくてオットーを見上げると、目が合う。
くすっと笑われた。
なんだか悔しくて少し顔をそらすと、ごめんごめん、って言いながらもまだ笑ってて。
「ね…僕のこと好き?」
それで突然真剣にそんなことを聞くものだから調子が狂う。
「…………」
「ヨア」
「…好きだよ」
「…ありがとう…」
与えられるのは噛み付くような口付け。
………。
「…は…っ、は…」
「……気持ちいい?」
「んっ……!!うぁ…あ…」
「よかった。いいみたいだね」
オットーが、僕の…あれを舐める。
嫌じゃないのかな、汚くないのかな、なんて思っていたのは最初のうちだけで。
その初めての感覚に僕の理性はあっさり崩れ去っていた。
「や、オット…で、出る…っ」
「ん、出していいよ…」
「…って、ま、えっ、口っ…離して、じゃないとっ」
「…じゃない…と?」
「オットーの口に出……っあぁ!」
離してって言ったのに。
逆に深く咥え込まれて、今までで一番激しくされて…。
「…はっ……あぁ…あ…」
オットーの口の中に…射精してしまった。
「…んー、大丈夫?」
「は…へーき…オットー…こそ…」
「大丈夫。飲みたくて飲んだから…」
「なっ、飲ん…!?ちょっ!?」
「別に平気だよ。ヨアヒムのだし」
オットーはくすくす、と笑う。
「…ねえ」
いつもの優しい中性的な雰囲気を纏ったオットーじゃなく、そこには「男」のオットーがいた。
「食べていい…?ヨアヒム」
…言葉の意味を深く考えずに、僕は頷いてしまった。
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